[2025_11_29_01]美浜、高浜原発差し止め認めず 名古屋高裁金沢支部が示す、原発の運転の可否決める担い手とは…(福井新聞2025年11月29日)
 
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美浜、高浜原発差し止め認めず 名古屋高裁金沢支部が示す、原発の運転の可否決める担い手とは…

 11:00
 関西電力美浜原発3号機と高浜原発1〜4号機は老朽化が進んで安全性に問題があるなどとして、福井県の住民らが関電にそれぞれ運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、名古屋高裁金沢支部(大野和明裁判長)は11月28日、「抽象的な危険性だけで差し止めを認めるべきではない」として、住民側の申し立てをいずれも退け、運転を認める決定をした。

 5基は営業運転開始から40年以上が経過し、うち美浜3号機は48年、高浜2号機は50年、同1号機は51年がたつ。6月に始まった新制度で60年を超える運転も事実上可能となる中、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の算定や老朽化対策、避難計画の妥当性が争点だった。

高浜原発2号機が運転開始から50年…積み残された「バックエンド問題」

 住民側は▽基準地震動が低く設定されている▽施設の老朽化に伴い重大事故が起きる可能性がある▽避難計画に実効性がなく被ばくのリスクがある−などと主張。関電側は、東京電力福島第1原発事故を踏まえた新規制基準に適合していると反論していた。

 美浜、高浜両原発の基準地震動について大野裁判長は、策定手法からすれば「日本のいずれかの地点で観測された地震動の数値より低いことは当然あり得る。それをもって低水準とは言えない」と指摘した。老朽化に関する住民側の主張は「抽象的な一般論の域を出ない」と判断し、高浜3、4号機の蒸気発生器伝熱管に減肉が生じるなどした事象には「関電の原因調査や対策が不十分とは認められない」と強調。避難計画に不備があることのみを理由に「放射線被害が及ぶ具体的危険性があるとは言えない」とした。

 総論として「原発の一般的な可否については、専門家の知見と議論を踏まえた上で立法府・行政府の判断によって決定されるべきだ。個々の原発の運転の可否は第一次的には原子力規制委員会の判断に委ねられるのがふさわしい」と指摘。「専門性や民主的基盤を有しない裁判所の役割は限定的」との見解を示した。

「極めて不当な決定」 住民側批判

 美浜3号機は1976年、高浜1〜4号機は74〜85年に運転を開始。福井地裁は昨年3月、申し立てをいずれも退ける決定をし、住民側が翌4月に即時抗告していた。
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