| [2025_11_22_11]<社説>柏崎再稼働容認 住民の不安置き去りだ(東京新聞2025年11月22日) |
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07:38 到底、民意をくんだ判断とは言い難い。新潟県の花角英世知事が東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を容認する意向を表明した。県民の多くが再稼働に否定的で、東電に対し強い不信感を抱いていることは、知事自らが進めた県民意識調査の結果を見ても明白だ。同原発では新たなテロ対策不備も見つかった。こうまで不祥事を繰り返す東電に原発を委ねるというのであれば、県民の不安から目を背けたに等しい。 知事は12月2日開会の県議会に自らの信任について諮り、認められれば国に、稼働していない全7基のうち6、7号機の再稼働容認を伝える方針を示した。再稼働が実現すれば、東電としては福島第1原発事故以降で初めてだ。 県民対象の意識調査は補足分も含め、9〜11月に県が実施した。県全体の調査結果によると、「再稼働の条件は現状で整っている」と思わない人は6割、東電が原発を動かすことが心配だとする人は7割にも上った。こうした結果を真摯(しんし)に受け止めるのであれば、容認の結論を導けるはずがない。 さらに、知事が容認を発表する直前になって、柏崎刈羽のテロ対策に関する機密文書を、社員が2020年と24年に無断で持ち出していたことが判明した。同原発では、21年にも社員によるIDカードの不正利用などテロ対策不備が発覚、原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令を受けた経緯がある(23年に解除)。福島事故を起こした後も、重大な不祥事を重ねる企業に安心して原発の運転を任せることはできない、と考える県民が多いのは当然だろう。 知事は以前から判断を示した上で「信を問う」としてきたが、それならば自らの進退をかけた知事選や県民投票で問うべきだ。 一方で東電は10月、再稼働への同意が得られることを条件に、1千億円規模の資金を県に拠出する方針を示し、政府も柏崎刈羽の事故時の避難道路の整備費の全額国費負担などを打ち出した。地元に「アメ」を差し出して早期決着を図ろうとの意図が透ける。知事はこれらも踏まえて判断したのだろうが、県民の安心、安全と引き換えにできるものではあるまい。 「地元同意」の焦点は今後、県議会の議論に移ることになるが、あくまで県民の不安に寄り添って判断すべきだ。政府や知事の意向の追認で終わってはならない。 |
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