[2025_12_12_03][社説]泊原発の再稼働を電力安定供給へ生かせ(日経新聞2025年12月12日)
 
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[社説]泊原発の再稼働を電力安定供給へ生かせ

 19:05
 北海道の鈴木直道知事が北海道電力泊原子力発電所3号機の再稼働に同意すると表明した。立地・周辺の4町村と道の同意が出そろい、北電は2027年の早い時期の発電再開へ準備を進める。

 新潟県の東京電力ホールディングス柏崎刈羽原発に続き、泊原発の再稼働にめどが立つことは、東日本の電力需給改善へ明るい材料だ。人工知能(AI)の普及で需要増加が見込まれる電力の安定供給に生かさなければならない。
 鈴木知事は道議会で「道内経済の成長や温暖化ガスの削減につながる」と再稼働を認める理由を説明した。泊3号機は7月に原子力規制委員会の安全審査に合格済みだ。北電は今後、再稼働の前提となる巨大防潮堤の完成を急ぐ。

 09年末に運転開始した泊3号機は、国内で最も新しい原発だ。東電福島第1原発事故の翌12年に定期検査のため停止した。
 13年に新安全基準の審査を申請したものの、活断層や地震の揺れ想定の評価に手間取った。防潮堤も設備が不十分だとしてつくり直しを迫られ、合格までに12年を要した。
 再稼働は道内のみならず国内経済の活性化への期待がかかる。

 ひとつは電気料金の格差是正だ。北海道は全国で最も高く、最も安い九州とは2割超の差がある。原発の再稼働後は火力発電の燃料費を削減できるため、北電は家庭向けで11%、企業向けは7%程度の値下げ方針を示している。
 もうひとつは新たな産業集積の後押しだ。北海道ではラピダスが最先端半導体の工場を建設中で、AI活用に不可欠なデータセンターの計画も相次ぐ。安価で低炭素な電力が大量に必要なため、原発の存在は大きな利点となる。

 安全・安心が最優先であることは言うまでもない。北電は併せて洋上風力などの再生可能エネルギーの開発、火力発電の低炭素化にも全力で取り組んでほしい。
 泊原発に近い寿都町と神恵内村は「核のごみ」の最終処分場の建設に手を挙げている。すでに文献調査を終えたものの、鈴木知事の反対などもあり、次の概要調査に進むめどは立っていない。

 賛否を巡り住民の分断が起きやすいこの問題で、ひたすら自治体の立候補を待つ現行方式には限界がある。国が処分地の候補を明示するなど、原発活用へ避けて通れない政策課題を前に進めるためにもっと前面に出るときだ。
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